VACANCYの会員さんご紹介シリーズ。

今回は、小豆島と東京で二拠点生活をされているプロダクトデザイナーの谷元幸花さんにお話を伺いました。

もともと大手メーカーにお勤めになられていた谷元さんですが、現在は義理のご実家が経営されているお土産屋さんで商品開発や企画、デザインを行っているそうです。

谷元さんがなぜ大手企業を辞めて二拠点生活をされることになったのか、また、そのやりがいや小豆島の魅力についてなど内容盛りだくさんのインタビューとなっております。

二拠点生活、フリーランスの働き方、ものづくり、プロダクトデザイン、小豆島などのキーワードに少しでもピンッときた方はぜひご覧ください!

プロフィール

谷元幸花

金沢美術工芸大学プロダクトデザイン専攻卒業後、コクヨ株式会社に入社。オフィス家具のデザイナー、商品企画業務を経験。商品の売り方も含めたデザインに取り組みたいと考え、MTG株式会社に入社し、ブランド構築の業務に従事。現在は今までの経験を元に、小豆島でお土産を取り扱う義理の実家にあたる有限会社谷元商会(http://tanimoto-shokai.com/)にて単身で商品企画開発デザイン業務中。1年間で10点以上の新商品を上市。また、個人事業主としてプロダクトとパッケージをメインにデザイン、企画提案、ディレクション活動をしている(https://www.sachika-d.com/)。

ー現在はどんなお仕事をされていますか?

谷元 商品開発や企画・デザイン全般に携わっています。

大きく分けると2つあって、1つは小豆島にある夫の実家がお土産の商品を開発して卸しているので、その新商品の開発に携わっています。

もう1つは知り合いづてに依頼を受けたプロダクトやグラフィックのデザインをしています。

谷元さんがデザインした小豆島のお土産

ーフリーランスとしてお仕事をされているということでしょうか?

谷元 義理の実家にも席を置いていますが、決まった時間に働いている訳ではないので、働き方はフリーランスに近いですね。

ー東京と小豆島の二拠点で生活をされていると伺ったのですが、それぞれどのくらいの割合で生活をなさっているのですか?

谷元 月によりますが、多い時は月の半分、少ない時は1週間くらいを小豆島で過ごしています。今年は瀬戸内芸術祭があったので、それに合わせて様々な商品を開発しました。

来年、再来年はそこが落ち着いてくるので、小豆島へ行く頻度は少し減らして、自分のやりたいことを増やしていこうと動いています。

ーやりたいことというのは具体的にどんなことですか?

谷元 もともと、ものづくりが好きなので、物を作って売るということを今後もしていきたいです。その際に、ただ作るのではなく、市場を見てどういう物をどういうところに投下していくのかを戦略的に考えることを大切にしたいです。

具体的な事は思案中ですが、私はどちらかというとアナログなものの開発が好きなので、そういうものをうまくネットと絡めて販売していきたいですね。ITが盛んな時代でも、具現化したものは残っていくと思うので、そういうところに携わっていけたらと考えています。

ーもともと、ものづくりは好きだったのですか?

谷元 はい。小学校1年生の頃の文集を見返すと「雑貨デザイナー」になりたいと書いてありました。小さい頃から何かものを使うたびに、お皿とかスポンジがもっとこうだったら良いのにとか漠然と考えていましたね。

そんな中、お店で雑貨が販売されているのを見て、商品1つ1つを作るデザイナーの存在を知りました。それから、こういう仕事をしたいと思うようになりました。

ー実際にその頃から何かものづくりをされていましたか?

谷元 小学生の頃から趣味で、犬小屋や小さい机を作ったり、ミシンで物を作ったり、編んでカゴを作ったりしていました。絵ももちろん好きでしたが、それよりも何かモノを作る方が好きだということにこの頃気がつきました。

ー中学校はやはり美術部に入部されたのですか?

谷元 実際、運動はそんなに好きではなかったのですが、周りの友人が運動部に入っていたのでソフトボール、バスケなどの運動部に入っていました。

ただ、途中でやっぱり何かを作っている方が楽しいなと感じて。高校は美術科に進学したかったのですが、親の考えもあり普通科の高校に進学することにしました。大学では美術を学びたいと考え、高校2年生の時に画塾に通い始めました。

ー美術大学という選択肢、一筋だったのですね。

谷元 元々勉強も好きだったので工学部で電子系のものづくりを勉強するか、美術大学でものづくりをデザインから学ぶか、建築を学ぶかなど、様々な選択肢がありました。ただ、工学部だと学部生の時は実技よりも筆記が多いと聞いていたので、それよりは実際に手で毎日ものを作ることのできる美術大学に進学したいと考えました。

ーご両親は反対しなかったのですか?

谷元 大賛成だったかはわかりませんが、毎日真剣に取り組んでいた本気さが伝わったのか最終的には賛成してくれました。当時、東京藝術大学に行きたくて浪人もしたのですが残念ながら落ちてしまい、学びたいことがピンポイントで学べて学費も安い金沢にある公立の美術大学に進学することにしました。

ー大学ではどんなことを学ばれたのですか?

谷元 製品デザイン学科という学部に進学しました。美術大学の中でも、ものづくりに特化した学科です。

ーどうして製品デザイン学科を選ばれたのですか?

谷元 当時、メーカーに入社したら私の好きなものづくりができるのではないかと考えていました。そこで学科の就職率を見てみると、製品デザイン学科はほとんどの学生がメーカーに就職していたんです。美術大学の学生は就職が難しいというイメージを持っていたのですが、その学科は就職率が高かったこともあって、この学科を選びました。

ー卒業後は実際にメーカーに就職されていますよね。

谷元 はい。有難いことに、3年生の終わり頃に希望していたメーカー2社ともから内定をいただき大手家具メーカーに入社することになりました。

ーなぜ大手家具メーカーを選ばれたのですか?

谷元 もともと家電も好きで家電メーカーも受けました。家具メーカーに関しては、偶然、大学に人事の方がいらっしゃっていて、ポートフォリオを何気なく見ていただいたら担当者の方がすごく褒めてくださって、ぜひ受けて欲しいと言ってくださったんです。

ーご縁があって入社されたのですね。実際に働かれてみていかがでしたか?

谷元 約5年半働きました。2年目までは新しいことも多くて、金型の作り方や樹脂の設計など学べることも多くて面白かったです。ただ、これは当たり前なのですが、思ったりよりもやりたいことができる訳ではありませんでした。

両親が看護婦と学校の先生で、いわゆるサラリーマンの働き方のイメージがわかず、働いてみて思ったのと違うなと3年目の時に思いました。

ー思ったのとは違うというのは具体的にどういうことでしょうか?

谷元 無知だっただけなのですが、私が抱いていたデザイナーのイメージが、お客様が作りたいものがあって、その市場を自分で調べて戦略を立ててコンセプトを作ってデザイン提案して……という一通りの流れが経験できるかなと思っていたのですが、実際は大手企業なのでデザインする以外の仕事の方が多かったことと、仕事のフェーズが細分化されて全体を掴めないことに違和感を感じました。長期的に商品づくりができる環境ではあったのですが、会社の販路などを踏まえると作りたいものが作れず、またBtoBのデザインに従事していたのですが、仕事をしてみてからBtoCのデザインがしたかったのだと痛感しました。

ーBtoBとBtoCの違いというのは具体的にどういうことですか?

谷元 例えば、ものを作る時に、実際に使用する人がどの様に使うかを考えますよね。机を作る場合、BtoCだと購入した方が直接その机を使います。ただ、BtoBだとそれを使うのは別の方です。総務の方が机を購入したとして、実際に使用するのは別のユーザーです。そうなると、総務の方に響くものを作らなければなりません。私は家具事業でBtoBを担当していたので、その乖離に少し違和感がありました。

ーその違和感がきっかけで辞めることにされたのですか?

谷元 そうですね。3年目あたりから、ここにずっといることはないだろうなと漠然と考えていました。

ーその後、やりたいことはありましたか?

谷元 ディレクションに近いことができればと考えていました。デザイナーと聞くと一般的に絵を書いたり形を作ったりというイメージがあると思います。ただ、私はその前段階に携わることも好きだなと大学時代に気づいたんです。市場を見て、どういう商品をどういう風に投下すると売れるのかを考えることが楽しくて。

緻密に形を作るよりも、どういうものが響くのかを重視する考え方があったので、デザイナーというよりデザインディレクションに近い方が向いているのではないかと思いました。なので、それを軸に次の会社はブランドを作る会社で、上場せずこじんまりとした雰囲気の会社に務めることになりました。そこは、仕事が細分化されていないイメージで且つ、BtoCで好きなことができそうな会社だったので転職を決めました。

ー実際に働かれてみていかがでしたか?

谷元 こじんまりとしてスピーディーだと伺っていたのですが、実際に働いてみると前の会社とあまり変わりませんでした。従業員が500人くらいの会社だったので大きい会社でしたね。前社は当時、正社員で6000人くらいだったのであまり規模感がわかっていなくて……。

転職した意味がないなと思い、1年くらいで辞める決断をしました。

ー退社後、ご実家のお土産屋さんで働かれることになったと思うのですが、きっかけは何だったのですか?

谷元 ちょうどその頃、義理の実家に帰省した際に商品案を提案してみたら実際に作ってみようという話になりました。すぐに商品作りに取り掛かり、商品が市場に出て売れていくのを体験して、本当に面白いなと感じました。一つの商品を出すために何回も会議を通すことも重要なことですが、商品を出してみて考えるというフレキシブルさがあってスピーディな環境が自分には合うなと気付きました。

また、義理の実家は4人くらいでお土産屋さんを営んでいたので規模的にも魅力的でしたね。それからフリーランスのような働き方をするようになりました。

ーフリーランスの働き方をされてちょうど1年くらいですよね。実際に義理のご実家で働かれてみていかがですか?

谷元 とても楽しいです。1年間で11種類の商品を作りました。0から企画したものもあれば、商品のパッケージデザインを変更したものもあります。パッケージのデザインを変更しただけで売り上げが3倍になったと伺いました。それを聞いて、本当に嬉しかったですね。

ーやりがいは何ですか?

谷元 戦略的にデザインができることです。例えば、デザイナーって一般的におしゃれなものが好きじゃないですか。でも、小豆島の土地に合う商品作りという視点で考えると、先進的なものよりも、素朴で現地で作ったデザインの方が受け入れていただけるのではないかと考えました。なので、手書きのフォントを使ったり、自分で手書きをして、ちょっと素朴な可愛いデザインにすることを意識しています。そういうことを考えてデザインするのは楽しくて、好きだなと実感しました。

ー2拠点生活をされてみていかがですか?

谷元 本当のところ言うと、どこでもドアが欲しいですね。そうすれば東京で働く夫と一緒に住みながら義理の実家を継げるので……。実際、距離ってすごく問題があります。でも、島に行くと単純に気持ちが良いです。船に乗って島へ行くこと自体、未だにワクワクしますし、義理の両親と生活するのも楽しいです。後、海の幸がスーパーに売っていて大きな白子が安く売っていたり、それを買ってみんなで料理したり。島は観光地ですが、17時にはどこのお店も閉まるので、どこも18時にはみんな家に居て、みんなでご飯を食べるんです。人間的な生活ができるところが良いなと思います。

デメリットは、都会の方が情報が早くて、それに比べて島はITの普及率が低くて。私は新しいもの好きなので、そこに身をおくことに怖さは感じます。でも、思ったよりも不便ではありません。アマゾンも1日で届くし、スーパーもドラックストアもあります。交通費がかかるところは難点ですけどね。

都会も良いところがあるし、島も良いところがたくさんある。いいとこ取りできるのが2拠点生活の良いところです。小豆島には仕事をしに行ってる訳ですが、半分バカンスみたいな感じです笑。

ー小豆島はどんな島ですか?

谷元 とても素敵な島です。観光が盛んで移住者も多く、オリーブや醤油、ごま油、手延べそうめんといった特産物が有名です。海が綺麗で水も綺麗です。島自体も大きくて2.5万人くらいの方が暮らしています。寒霞渓といって、島なのに渓谷があり、日本三大渓谷にも選ばれている場所があるのですが、そこがすごくおすすめですね。後は、オリーブの関係でギリシャとの交流があり、オリーブ公園のギリシャ風車がインスタ映えスポットとして人気を集めています。瀬戸内芸術祭にも参加しているので、街中にアートオブジェが点在していて、1泊2日で観光するのにとてもおすすめな島ですよ。季節は、夏が定番ですが紅葉が綺麗な秋が特におすすめです!移動は、東京から飛行機で1時間、バスで30分、船で30分くらいなので意外と近いです。色々な行き方がありますが、半日もあれば東京から小豆島に行くことができます。

小豆島の風車
秋の小豆島と谷元商会のオリーブサイダー

ー東京でお仕事をする際は普段VACANCYを利用してくださっていますよね。利用することになったきっかけは何ですか?

谷元 フリーランスのような働き方をするようになってからは家で仕事をしていました。ただ、1ヶ月くらい経った時に、誰とも関わらないことが怖くなってきてコワーキングスペースに行ってみようと思ったんです。家から自転車で通える場所で検索をしたら、いくつか出てきて、その中でも1番アットホームそうで良い出会いがありそうな場所を選びました。はじめに1dayで利用してみたのですが、オーナーの小山さんの人柄が気さくで居心地が良く、周りにいる人も話しかけてくださって私の性格に合っているなと思いMonthlyで利用することにしました。

ーVACANCYを実際に利用してみていかがですか?

谷元 すごく良いです!周りの人にも勧めたいくらい良いです。他のコワーキングスペースだと黙々と作業することになるので、それだと家でもできるなと思っていて。それに比べるとVACANCYはアットホームで様々な交流があるのでオススメですね。

ーありがとうございます!谷元さんは様々なお仕事を担当されていると思うのですが、お仕事をする上で、大切にしていることはありますか?

谷元 好きな言葉は「十人十色」です。自分の考えを押し付けるのではなく、多様な価値観を融合してものを作っていった方が、多くの人に響くものが作れると思っています。価値観を押し付けるのも、押し付けられるのも好きじゃないので。みんな違ってみんな良いという考え方を仕事でもプライベートでも大切にしています。

ー最後になりますが、今後やりたいことや目標はありますか?

谷元 一生ものを作って生きていきたいです。

ものを作れる環境を与えてくれる人がこれからもいればいいなと思います。自分から発信もするし、クライアントワークもするという生活を続けていきたいです。

谷元さん、ありがとうございました!

私もいつか小豆島に行って谷元さんの作ったお土産を買いたいです♡

小豆島には中々行けないけれど、「小豆島の名産品や谷元さんが作った商品が気になる!」と言う方。ぜひオンラインストアをチェックしてみてくださいね!

http://tanimoto-shokai.com

お読みいただき、ありがとうございました!