VACANCY会員さんご紹介シリーズ、今回は小林高行さんにインタビューをさせていただきました。

小林さんはICTコンサルティング会社の代表を務めながらNPO法人の副理事長として活躍されています。また一児の父でもあり、お子さんとYouTubeの配信をされていたり、SNSでも仲睦まじい様子が伺えます。

そんな小林さんですがロスジェネ世代第一期、新卒で入社した会社で円形脱毛症になり、退職してフリーターになった過去や、会社経営、地方議会議員選挙に出馬するなど様々なご経験をされています。

来年50歳という節目を迎える小林さんのこれまでとこれからについて伺いました。

前編では、バブル崩壊時の就職やフリーター時代の生活、安定的な仕事を捨て起業した先でみた現実、NPO法人設立のきっかけなどについて。後編では、育児、ご自身のターニングポイントと語る地方議会議員選挙への出馬経験、さらには小学生の頃から大切にされているという考え方についてお伺いしました。

赤裸々に語ってくださったので、皆さんの中にも何か心に響くものがあるのではないかと思います。ぜひご覧ください!

▼プロフィール

小林高行

1971年川崎市生まれ。法政大学経済学部卒業後、SEの仕事に従事する一方、小中高向け教育支援団体NPO法人学校サポートセンターを設立し、副理事長に就任。2005年システム開発会社の株式会社Bizletを設立、代表取締役に就任。2017年に退任した後、ICTコンサルティング会社である株式会社スモールツリーを設立、代表取締役を務める。

子育ての本質

――お子さんと楽しく過ごされている様子をいつもSNSで拝見しています。

小林 現在、小学校4年生の一人娘です。幸運なことに、大変健やかに育っています。子育てってすごく楽しいし、経営とは別の次元ですごい学んでいます。50センチくらいで生まれて今はもう130センチくらいになってますけど、赤ちゃんなんてほって置いたらすぐ死んじゃう。だから大事に育てて、大きくなったらまたそれはそれで問題が出てきて。子どもが生まれて9年間ずっと向き合ってきて、いまだに勉強させてもらっていますね。それは多分仕事にも良い面があるんじゃないかなと思っていて、あんまり細かいことを気にしなくなったし、元気だったら良いやみたいな。まあ会社もコロナ禍で色々あったけど生きていれば良いよ、なんとかなるよって。

仕事も子育ても分散させる生活を

――仕事をしながら子育てをするのは大変なことですが、仕事と子育てをすることで、何か相乗効果はあると思いますか?

小林 あると思います。結局24時間しかないから、何かを選択したらトレードオフで何かを選べなくなる。で、何を選ぶかっていう問題なんだけど、僕はできるだけたくさんのことに分散していた方が効果的だなって思っています。もちろん1つに集中する生き方もあるけど、それがなくなっちゃう可能性もあるじゃないですか。今回コロナ禍でそれがなくなっちゃった人、たくさんいると思うんですよ。当たり前だと思っていたことがなくなっちゃうじゃないですか。それがずっと自分の中にあって、明日は同じとは限らないし、明日生きているかどうかも確約はできない。だからできるだけ分散しといた方が、人生のリスクヘッジになるし意外とそれぞれ効果があるんです。最近料理をしているのですが、料理も作る工程管理とか、何よりそれを食べてくれる奥さんと子どもの反応がわかるわけですよ。すごく気づきがあるんです。「実生活から学ぶことはたくさんある」ということを福澤諭吉が『学問のすすめ』か何かに書いていて。それはずっと思っていて、子育ても自分の学びのためにやっているようなところもあります。

――お子さんが産まれてから心境の変化は大きかったですか?

小林 そうですね。子どもが産まれてからは、かなり子育てにフォーカスしてるかもしれない、気持ちが。やっぱり他のことよりも一番楽しいから。子育ては自分の中で社会実験だと思っていて、この子がどんな大人になるのかなって。こういう接し方をしていったらどう育つのかなっていうのを観察していて、どっちかっていうとそれがメイン、主力かなって感じですかね。

――子育てで意識していることはありますか?

小林 子育ての目標は自立なんですよね。彼女がちゃんと自己主張できる、自分っていう骨格を持った人になって欲しいなと思っていて、どうやったら自立した人になるかなと思いながらアプローチしているんですけど、全然上手くいってる気がしなくて……。関われば関わるほど依存心が増えていっているような。こっちとしては早く自立して欲しいじゃないですか。できるだけそういう方向に関わっていくけど、関われば関わるほど一生一緒にいてくれや!みたいになってしまっていて。まあ今だけかもしれないですけどね。

――奥様はどんなお仕事をされていますか?

小林 謎なんですよね。本当に何しているのか謎で。謎なんですけど、あんまり立ち入らないようにしてて、元気だったら良いやみたいな。

――あまり干渉し合わないのですね。

小林 全然しないですね。うちの奥さん、僕が何をしているのか何も知らないですから。仕事内容もよく知らないし収入も知らない。ついこの間まで僕のLINEアカウントも知らなかったですから。多分、奥さんも僕が元気だったら良いってきっと思ってるし、子育てに積極的に関わっていることに対しては、多分それなりに高評価だと思うんですよね。

――コロナ禍で、自宅で過ごす時間がすごく長かったと思うのですが、ご家族の関係性に変化はありましたか?

小林 会話は増えましたよね。コンタクト回数が多いので。子どもとも週末だけじゃなくて平日も一緒にいるようになったから、遊びのレパートリーも増えましたね。一緒に料理をしたり、そういう関わり合いは増えたかな。逆に、親との関係性でこういうの良かったっていうのはありますか?

――干渉されなかったことですね。母は私が何をやりたいのか、何をやっているのか知らないのにお金を出してくれて、とても感謝しています。あれこれ言われるのがすごく嫌だったので。

小林 みんなそうですよね。でも勉強ってすごい武器じゃないですか。投資対効果も高いし、やっておいた方が武器になると思って、子どもには接しているんですけどね。でも子どもは全然そんな風には考えない。だからどうしたら勉強ってお得と思ってくれるかっていうのを考えながらレールを敷いています。でも全然通らないし引っかからない。察してるんですよ。お父さんが私に何かさせようとしているって。勉強も通信講座を契約してiPadと一緒にそっと机の上に置いて。だけど完全に見透かされていて。ガジェットを与えたのは僕なんですけど、ずっとYouTube見てて。やっぱり楽しいじゃないですか。それを自制するのは大変なことだから、与えた側の責任として、いったん全ての通信を強制シャットアウトしました。いったんリセットして、もう一度ルールを確認して、今はリトライ中です。子どもとの関わりはずっと試行錯誤ですね。

人生のターニングポイントとなった地方議会議員選挙

――お話は変わりますが、以前、選挙に出馬されたことがあると伺いしました。

小林 はい。ちょうどVACANCYに来るきっかけになった出来事ですね。2015年に地元の市議会議員選挙に立候補しました。会社辞める2年前のちょうど悶々としていた時で、このままでいいのか、やり残したことがあるんじゃないかって思ってた頃で、よし政治家になろうと思って。代表取締役のまま、創業メンバーの2人に「選挙出て良い?」って聞いて。また小林が変なこと言い始めたって。でも「いいんじゃない?」って渋々オッケーをもらって、最後はみんな手伝ってくれて。奥さんに選挙出るわって言った時は、お互い尊重し合って干渉もしない奥さんに2週間くらい無視されましたね。でも、最終的には色々と応援してくれました。

――なぜ出馬されたのですか?

小林 40才を超えて、人生もやもやしていて、何かきっかけが欲しかったんです。ずっとビジネスと教育NPOをやってきて、また子育ても始まって、あと何かやり残していることないかなって。社会貢献というわけじゃないですけど、これまでやってきたことを活かして、何かできないかなって。で、思い立ったのが議員という仕事。それで2014年12月に初めてVACANCYに遊びにきたんです。僕の挑戦を応援してくれていた友達がちょうどここの会員で「今度選挙出るんですよ」って小山さんとか紹介してくれて。それがスタートでした。

――出馬されてみていかがでしたか?

小林 選挙もマーケティングだから認知されないとダメなんですよね。商品が棚に並んでるから取れるけど、並んでなかったら取れない。それと一緒でいかに自分の顔と名前が認知されているかっていう勝負なんですよね。でも僕はそれが全然わかっていなくて、能力とか実績を評価して投票するのかなって思ってたけど、そんなことなくて。知ってるか知らないかがとても大事なんですよね。この顔を見たことあるかどうか。見たことない顔の人には投票しないし、そもそも投票所に顔写真ないですから。地道に顔と名前を売り続ける活動をしてきた人たちが当選する。僕はほとんどwebの中で、webマーケティングでいくんじゃないかって思っていたけど全然そんなことなかった。大惨敗でした。だけど、俺の中で人生のめちゃくちゃ良いきっかけになりました。

――どの様なきっかけになったのですか?

小林 何か新しいことに挑戦するハードルが一気に下がりました。選挙に出るってハードルめちゃくちゃ高いじゃないですか。時間もお金もかけて活動しても、当選して仕事の機会を得られるのはごく一部の人だけです。なかなかそこに行くのって躊躇いますよね。でも、政治に文句言うだけじゃなくて、手をあげてお金も払って、世の中を変えて行きたいっていう意思を表明できたことはすごく良かったと思っているんです。これでスイッチが入ったから、2年後にスモールツリーという社会的事業を始められたと思っています。。

――政治に不満がある人はたくさんいますが、自分で行動に起こす人は少ないですよね。

小林 めちゃくちゃ不満があったかっていうとそうでもないですけど、やっぱり変える側にならないとダメだし、変える側になりたいなと。子どもが当時3歳くらいだったんですけど、そういう姿を見せたいなって思って。

乗り越えることはできない。それでも生きていく

――これまで、挫折したり凹んだりしたことはありませんでしたか?

小林 いっぱいありますよ。新卒で入った会社に2年いたけどストレスでずっと円形脱毛症だったし。学生時代からびびりだったし、社会人になってもそんなに積極的な性格ではなかったからすごい辛かったです。最初の会社なんて、どうやったら辞められるのかなってずっと思い悩んでました。結局、最後に辞める時は会社の寮を逃げして。

――だんだん変わっていったのですね。

小林 変わっていったんでしょうね。やっぱり会社を経営し始めてからですよね。結婚して会社を経営してからめちゃくちゃ色んなことがあったし。取引先がリーマンショックで倒産して、うちも未回収の売掛が相当あったし、社員の仕事も全くないような状況が続いたり、長年の付き合いだった社員が自殺してしまったりして。本当にいいやつで優秀な仲間だったんだけど。その時は立ち直れないくらいショックでした。自分が会社を起業してなかったら、彼にも別の人生があって、こんな結果にはならなかった可能性があるじゃないですか。考えれば考えるだけ何も答えが出なくて、その時が一番辛かったですね。

――どう乗り越えたのですか?

小林 乗り越えられているかは解らないですけど、困難な状況であっても生きていくしかないですし、どんな状況であっても前を向いて生き残っていく使命があるとは思っています。家族も仲間もいますしね。それが支えになってますね。

不健康なことはしない。50歳からのもう1ターンに向けて

――大切にされていることや座右の銘はありますか?

小林 小学校5年生の時に書き初めで、大事にしている四字熟語を書く課題があって「健康第一」って書いたんです。母親が「健康が一番大事」と言っていて、確かにそうかもなって子ども心に思ってて。特に心の健康を保てるように、自分がストレスを感じない言動を意識しています。

――健康に気をつけていらっしゃるのですね。

小林 気をつけてる方だと思いますね。不健康なことはあまりしたくなくて。嫌なこと、やりたくないことをやるとか、言いたくないことを言うとか、嫌だけど会うとか。そういうのは心に良くないなって思うので、ストレスが溜まらないよう、ある意味わがままに生きています

――最後に、VACANCYを利用してみていかがでしたか?

小林 みんなそれぞれの事業があって、スポットで来る人もたくさんいるし、ここはシェアオフィスという感じなのが良いなと思っています。毎日ここに来るのが楽しいです。皆さんそれぞれの得意な分野も分かっているから、なんかあった時に相談もできるし、一緒に組んで新しい事業に挑戦できたら良いなって。

――小林さん、ありがとうございました。いつ眠ってらっしゃるのだろうと思うほど、たくさんの役割を担っていて、とてもお忙しいはずなのに、小林さんはいつも面白くて快活な印象でした。それがどうしてなのか、今回のインタビューでその秘訣が少し分かった気がいたします。いつ当たり前がなくなっても良いように足場を分散させることや、体にとっても心にとっても不健康なことはしないと決めることなど私も少しずつ実践していきます。また、小林さんのご経験から、困難に直面した時、それを乗り越えるというより、困難の中で前を向いて生きていくためのヒントをいただけた気がいたします。ただの面白おじさんではありませんでした。インタビューのお時間をいただき、本当にありがとうございました!